Don Carlo

ドン・カルロ


こちらは、19世紀を代表するイタリアのロマン派音楽の作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディ作曲によるオペラで、ヴェルディの中期の作品に分類されます。

原作は、ドイツの劇作家 フリードリヒ・フォン・シラー作の戯曲『ドン・カルロス』(1787年作)です。

ウィーンに訪れたときに、国立歌劇場で上演されているのを、観に行きました。イタリアオペラということで、華やかな印象のオペラでした。

元々は、1865年のパリ・オペラ座の依頼により、1865年から1866年にかけて作曲、全5幕のオペラとして1867年3月にオペラ座にて初演しました。オペラ座からの依頼は、1867年にパリ開催が決定していた万国博覧会にあわせて上演するためのグランド・オペラでした。

1867年3月11日、フランス皇帝ナポレオン3世夫妻を迎え、オペラ座にて初演を迎えたのだったが、ウジェニー皇后(スペイン出身、熱心なカトリック信者と伝えられる)が内容に不快感を示して途中で席を立ってしまったこともあり、初演は失敗に終わってしまい、この作品でもヴェルディがパリでの決定的成功を得ることはかないませんでした。ヴェルディがこの歌劇の作曲者として評価されるのは、3か月後のロンドン上演の成功まで待たなければなりませんでした。

16世紀のスペインを舞台に、スペイン国王フィリッポ2世(バス/実在のスペイン国王フェリペ2世)と若き王妃エリザベッタ(ソプラノ)、スペイン王子ドン・カルロ(テノール)、王子の親友ロドリーゴ侯爵(バリトン)、王子を愛する女官エボリ公女(メゾ・ソプラノ)、カトリック教会の権力者・宗教裁判長(バス)たち多彩な登場人物が繰り広げる愛と政治をめぐる葛藤を壮大で重厚な音楽によって描いています。

このオペラにおいては二つの公的な対立と幾つかの個人的葛藤によって構成されています。

一つ目の対立は宗教界における旧教と新教の対立であり、スペインはカトリック教の有力な勢力であるのでフィリッポ2世と大審問官(宗教裁判長)がこれにあたります。一方、フランドル地方は新教徒が多く、ポーザ候ロドリーゴとドン・カルロがこちらの代表となります。

二つ目の対立は政治権力(フィリッポ2世)と宗教権力(宗教裁判長)ですが、当時の状況では後者の方が明らかに強かったことが分かります。

個人的葛藤は、カルロとエリザベッタの宿命的恋、エボリ公女の嫉妬、フィリッポ2世の妻との不仲、フィリッポ2世とエボリ公女の不倫、カルロとロドリーゴの友情です。こういった個人的葛藤が重々しく展開され、男性は英雄として挫折し、女性は愛のために身を滅ぼしていくのです。


1884年のミラノ・スカラ座での上演の際の描画

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