Der Ring des Nibelungen

『ニーベルングの指環』


19世紀のドイツの作曲家、リヒャルト・ワーグナーの書いた楽劇です。

ワーグナー35歳の1848年から61歳の1874年にかけて作曲されました。4部作で構成され、上演に約15時間を要する為、少なくとも4日を必要とする長大な作品です。

4日間の内訳は以下の通りです。

序夜 『ラインの黄金』(Das Rheingold):2時間40分

第1日 『ワルキューレ』(Die Walküre):3時間50分

第2日 『ジークフリート』(Siegfried):4時間

第3日 『神々の黄昏』(Götterdämmerung):4時間30分


四部作はそれぞれ独立した性格を持ち、単独上演が可能である。そのなかで『ワルキューレ』は、もっとも人気が高く、上演機会も多いようです。

物語は、『エッダ』、『ヴォルスンガ・サガ』など北欧神話の物語を軸にしつつドイツの叙事詩『ニーベルンゲンの歌』を始めとするドイツ英雄伝説や、ワーグナー独自の重層的・多義的な世界が構築されています。

直接引用されてはいないがギリシア神話の影響も多分に見られます。

なお、ニーベルングとは、ゲルマン神話に登場する小人族または、その宝(黄金や指環)を所有する者を指します。

序夜 『ラインの黄金』で、ニーベルング族の小人が、ライン川の乙女たちから、ライン川底にある黄金を奪い、指環を作ります。

川底にある黄金で作った指環を所有する者は権力を掌握することができ、指環は、愛を断念することと引き替えに作ることができるのです。

ワルキューレとは、作品中に登場する、ヴォータン(神々の長)の9人の娘の事を言い、題名は、エルダ(智の神)との間の娘のブリュンヒルデ、ひとりを指しています。

ワルキューレは、馬に乗って天空を駆け、戦場(Wal)で死者の中から、屈強な勇士を選び(küren)、神々の城ヴァルハルへ運ぶのが務めです。運ばれてきた戦士たちは再生され、ヴァルハルを守ります。


『ワルキューレ』(Die Walküre)

第1幕 - 

嵐の夜、フンディング(人間、部族の長)の館にジークムント(ヴォータンと人間女性の間の息子)があらわれる。

彼とフンディングの妻ジークリンデ(ヴォータンと人間女性の間の娘)はお互いに惹かれあう。

やがてフンディングが帰宅し、フンディングが一族の敵であること、ジークリンデがジークムントの生き別れの双子の妹であることを知る。

第2幕 - 

荒涼たる岩山。

ヴォータン(神々の王)とその娘、ブリュンヒルデワルキューレ、戦乙女がいる。

そこへ、ヴォータンの妻フリッカ(結婚の女神)が現れる。

フリッカは、妻を奪われたフンディングの復讐と婚姻の神聖を守るためとして、ヴォータンにジークムントの死を求め、ヴォータンはやむなく承諾する。

ブリュンヒルデはヴォータンからジークムントがフンディングによって殺害されること、そしてそれを見殺しにすべきことを告げられる。

ブリュンヒルデは兄妹を守ろうとするが、ジークムントはフンディングの槍に貫かれてしまう。

第3幕 - 

ヴォータンの怒りを逃れ、ブリュンヒルデはヴァルハラに駆け込み、妹たちに助けを求める。

ブリュンヒルデはジークリンデが身ごもっていることを告げ、胎内の子をジークフリート(竜殺しの英雄)と名付ける。

そこへヴォータンが現れ、ブリュンヒルデの神性を奪うことを宣告する。

荒涼たる岩山にヴォータンはブリュンヒルデを連れて行き、ブリュンヒルデがそこで眠りにつき、誰であれ彼女の眠りを最初に覚ました男のものとなることを宣告する。

ブリュンヒルデは己の運命におびえ、許しを請うが、ヴォータンは聞き入れない。

ただし恐れを知らない英雄だけが越えられる炎で、ブリュンヒルデの周りを覆うことを約束する。

親子は抱きしめあい、永遠の別れを告げる。ブリュンヒルデは岩山の頂に眠り、ローゲの炎がその周りに燃え上がる。



※岩の上のブリュンヒルデ:ショット社ヴォーカルスコアの表紙絵(1899年)


この物語で、フリッカ(結婚の女神)はヴォータンの妻で、エルダ(智の神)はヴォータンとの出会いを通じてブリュンヒルデを産むヒロインとなっています。

ヴォータンは、この2人を通して、神々の秩序と、その秩序を脅かすブリュンヒルデの運命を象徴的に表現しています。


参考資料:昭和音楽大学「続・ワーグナーに親しむ」講座


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