The Peasant Dance

『農民の踊り』


フランドルの画家ピーテル・ブリューゲルが1568年頃に描いた絵画です。


作者 ピーテル・ブリューゲル

製作年 1568年頃

種類 油彩、板

寸法 114 cm × 164 cm (45 in × 65 in)

所蔵  Kunsthistorisches Museum - KHM.at 美術史美術館、ウィーン


フランドルの農村におけるケルメスと呼ばれる縁日の様子が描かれていて、風俗画に分類されます。

奧行きを出すための遠近法が用いられていることや、大型の人物が描き入れられていることなどから、ブリューゲルの晩年に描かれたものと考えられています。

16世紀のフランドル地方の農村を舞台に、祭りを楽しむ農民たちの姿、踊る人々、飲食する人々、そして背景には教会が描かれています。ブリューゲルは、農民の生活をありのままに描くことで、当時の社会風俗や宗教観を反映させました。

村の道で4人ほどの男女が、バグパイプの演奏に合わせて、ペアになって踊っています。画面の右端には、1人の老爺が女性の手を引きながら、踊りに参加するために走り込んできた様子が描かれています。老爺の帽子には、スプーンが装着されています。

画面の左側には、居酒屋の前に持ち出されたテーブルが描かれており、その周りには村民の他に、バグパイプの演奏者が集っています。バグパイプを演奏している太った男性は、指をパイプの穴に正確なポジションに添えており、頬を大きく膨らませています。バグパイプは、極めて正確に描かれています。テーブルの上には、バターやパン、水差しなどが描かれています。

バグパイプ奏者の手前には、小さな子どもに踊りを教えている老女の姿が描かれています。バグパイプ奏者の後方には、素焼きのジョッキを手にしている男性客がビールを勧めている様子が描かれています。帽子で目が隠れている盲人の他に、手を前に差し出している男性は、物乞いであると思われます。

キスを交わす恋人たちや、左右で色が異なる衣服を身につけた道化の他に、家の中から女性を引っ張り出そうとしている人物などが描かれています。

画面中央左に描かれた農家の2階の窓からは、赤い「ケルメスの聖旗」が垂れ下げられていますが、この旗は、縁日の賑わいの中で、宗教的な意味合いを忘れ、浮かれ騒ぐ農民たちを象徴的に表しています。

画面右端に描かれた木の幹には、聖母子像の絵が掲げられており、その下には花輪が描かれています。画面後方には、教会が描かれています。

ブリューゲルが描いた、16世紀のフランドル地方は、現在のベルギー、フランス北部、オランダ南部にまたがる地域で、宗教改革の影響を強く受け、カトリックとプロテスタント(特にカルヴァン派)の宗教対立が激化しました。

北部ネーデルラントでは独立運動が起こりましたが、フランドル地方はスペイン領に留まりました。

この時代のフランドル絵画は、宗教的なテーマを描きつつも、現実を冷静に見つめる観察眼が特徴的です。


コメント

このブログの人気の投稿